お施主様から聞いた希望を、いったん持ち帰り、設計士が図面を作成する。3D CADでモデルを組み、素材や光を調整したパースを数週間後の面談で見せる。その方法には、設計を正確に検討するための大切な役割があります。一方、面談の席で「どんな時間を過ごしたいか」を話している最中に、その方向を目で確かめる方法も欲しいと考えました。
これは、伴走記#2で紹介したスケッチの検証を、お施主様との初回面談に持ち込んだ記録です。単にスケッチを実写調に変換できるかではなく、画像を挟むことで対話がどう変わるかが今回の焦点でした。
まだ図面になっていない言葉を、その場で確かめる
ショールームでの面談中、設計士が聞いた暮らしの希望を、まず小さなスケッチに描きました。窓辺で本を読む場所、中庭とのつながり、夕方の光。お施主様が思い浮かべる風景はあっても、窓の寸法や家具の配置が決まっているわけではありません。
そこで、手描きのスケッチを撮影し、設計事務所が整理してきた素材と光の条件を添えて、試験的に画像を生成しました。モニターに現れたのは「すでに設計された住宅の完成予想図」ではなく、その席で聞いた言葉を手がかりに描いた一つの情景です。お施主様が画面を見ながら、どの部分が思い描く暮らしに近く、何を変えたいかを話せることに意味がありました。
従来は、初回面談の後にCADパースを見て初めて「もう少し庭が近く感じられるといい」「明るすぎるより落ち着いた場所がほしい」と気づくこともあります。今回は、その気づきの一部を初回の会話の中で得られたのです。提案の早さだけでなく、設計士が次の図面に持ち帰る情報が具体的になりました。
画像が足したものを、設計したものと混ぜない
画面の画像は説得力があります。だからこそ、何がスケッチや対話にあり、何をAIが補ったかをその場で分けます。たとえば、存在しない開口部、まだ選んでいない家具や照明、実物と違うサッシ、過大な中庭。心地よく見えるからといって、すべてを採用条件にはできません。
設計スタッフからも、蛇口やサッシの形状が実物と違う画像を、そのままお施主様へ見せてよいのかという疑問が出ました。その疑問は、設計を担う人の責任感から生じています。私は、画像を「暮らしの方向を話すための資料」と説明し、正式な寸法や構造、法規、予算、仕様は設計士がCAD・図面・製品資料で検討すると役割を分けました。AI画像は図面の代わりにならず、CADをやめるという話でもありません。
面談後には、何に共感があったか、何を変えたいか、未決定の部分はどこかを設計側のメモに残す。そうしないと、美しい一枚が次の設計判断につながりません。画面では夕暮れの陰影に惹かれたとしても、それは「このサッシと家具を採用したい」という意味とは限らないからです。
「待つ時間」の中身を変える
数週間後のCADパース提示を、初回面談のAI画像が丸ごと置き換えるわけではありません。面談では、お施主様と設計士が同じイメージを見て言葉を増やす。その後、設計士が敷地、形状、性能、予算を検討し、より正確な資料で確認する。従来の待ち時間に埋もれがちだった「希望の読み違い」を、早い段階で見つけるための試みです。
私がその席で感じたのは、早く出した画像をそのまま正解にする危うさと、早く画像を見られるからこそ生まれる会話の豊かさでした。この二つを分けて扱えば、初回面談は単に要望を預かる場から、一緒に方向を探る場へ近づきます。
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