「LIXILのリシェルを配置してください」とAIへ指示したのに、別の商品に見えるキッチンが生成されたことはないでしょうか。
商品名だけでは、ワークトップの色柄、扉、取手、シンク、水栓、食洗機など、実際に採用する仕様までAIへ正確に伝わるとは限りません。
実在するキッチンをAIパースへ近づけるには、次の2つを組み合わせることが重要です。
商品画像や仕様資料を見せる
商品の特徴を言葉に分解して伝える
Freespace & Ideasでは、この作業を単なる画像合成ではなく、商品をAIが理解できる情報へ置き換える「言語翻訳・空間調律」として考えています。
この記事では、LIXIL「リシェル」を例に、実在するキッチンを住宅提案用のAIパースへ自然に反映する方法を紹介します。
LIXIL「リシェル」は商品名だけでは再現しにくい
リシェルには、複数のレイアウト、ワークトップ、扉、取手、収納、設備機器があります。
同じリシェルでも、選ぶ仕様によって印象は大きく変わります。
例えば、AIが「リシェル」という商品名を認識しても、次の内容まで自動的に判断できるとは限りません。
アイランド型か、ペニンシュラ型か
キッチンの間口と奥行
セラミックトップの色柄
厚みを感じるデザインか、薄いスリムデザインか
扉の色と質感
取手の形状と色
シンクと水栓の位置
食洗機の有無と配置
背面収納の構成
床や壁との色彩バランス
そのため、商品名だけを入力して一度で完成させるのではなく、採用仕様を分解して段階的に伝える方が再現しやすくなります。
実例|指示方法によってキッチンの再現度はどう変わるのか
AIパースにキッチンを配置するとき、すべての提案で実在商品を細部まで再現する必要はありません。
商談の初期段階では、LDK全体の雰囲気や暮らし方が伝われば、簡易的な生成でも十分に役割を果たします。一方、採用商品が決まっている場合や、色・素材の組み合わせを確認したい場合は、商品名や参考画像を使って再現度を高めます。
ここでは、同じ室内に対して、指示方法を3段階に変えた生成例を比較します。
① イメージだけを伝えた生成

商品名や具体的な仕様を指定せず、キッチンの雰囲気だけをAIへ伝えた例です。
実在商品とは一致しませんが、空間全体のデザインがまとまりやすく、美しいイメージを短時間で作れます。
初回商談で方向性を探る場合や、「明るく開放的なLDK」「落ち着いた高級感のあるキッチン」など、空間の印象を共有したい場合には、この方法でも十分です。
② 商品名と色を指定した生成

「LIXIL リシェル」と、希望するワークトップや扉の色を文章で指定した例です。
商品画像を入力しなくても、リシェルを想起させるデザインや色彩に近づき、採用後の大まかなイメージを伝えやすくなります。
ただし、ワークトップの厚み、取手、シンク、水栓、設備機器などが、実際の仕様と一致するとは限りません。「リシェルの採用イメージを共有する段階」と考えるのが適切です。
③ 商品画像を参照させた生成

商品名と色に加えて、採用を検討しているリシェルの商品画像をAIへ入力した例です。
3つの方法の中では、ワークトップ、扉、取手、全体のフォルムなどを、参考商品に最も近づけやすくなります。
ただし、商品画像を参照させても、AIが寸法や仕様を完全に再現するわけではありません。生成後は、採用予定の仕様書や見積書と照合する必要があります。
提案の段階に合わせて、必要な再現度を選ぶ
3つの方法には、それぞれ適した使い方があります。
指示方法 | 適した場面 | 再現の考え方 |
|---|---|---|
イメージだけを指示 | 初回商談・デザインの方向性確認 | 空間全体の美しさを優先する |
商品名と色を指示 | 商品候補を絞る段階 | 採用後の大まかな印象を共有する |
商品画像を参照 | 採用商品が具体化した段階 | 色・素材・形状を参考商品へ近づける |
初回提案であれば、美しい空間イメージを短時間で見せるだけでも、お施主様との会話を始める材料になります。
商品が具体化してから、商品名、色、商品画像、仕様資料を追加し、必要な範囲だけ再現度を高めればよいでしょう。
大切なのは、毎回完璧な商品再現を目指すことではありません。商談の段階と使用目的に合わせて、必要な精度を選ぶことです。
AIパースに再現する前に用意するもの
1.採用予定仕様が分かる資料
最初に、実際に採用を検討している仕様を整理します。
商品シリーズ名
キッチンのレイアウト
間口・奥行・高さ
ワークトップの種類と色
扉カラー
取手
シンク
水栓
加熱機器
食器洗い乾燥機
背面収納
仕様が確定していない場合は、「確定仕様」と「イメージとして検討中の部分」を分けておきます。
AIパースが美しく仕上がっても、それが実際に選定できる組み合わせとは限りません。最終的な仕様、対応寸法、納期、価格は、LIXILの最新カタログ、ショールーム、見積書などで確認してください。
2.キッチンの正面に近い商品画像
参考画像は、できるだけ商品全体が分かるものを用意します。
斜めから撮影された写真だけでは、AIが寸法や形状を誤って解釈することがあります。可能であれば、次の資料を組み合わせます。
キッチン全体が分かる画像
ワークトップの色柄が分かる画像
扉と取手が分かる画像
シンクや水栓の画像
平面図や展開図
メーカーの仕様書や見積明細
商品画像をAIへ入力したり、生成結果を広告やWebサイトへ掲載したりする場合は、画像の利用条件や権利関係も確認してください。
3.キッチンを配置する室内画像
キッチンだけでなく、配置先となるLDKの画像も用意します。
室内画像では、次の部分が確認できるものが適しています。
床と壁
キッチンを配置する位置
窓や建具
天井高
ダイニングとの位置関係
照明
カメラアングル
元画像の建築条件を維持したい場合は、「変更してはいけない部分」を明確に伝えます。
リシェルをAIパースへ反映する実務手順
手順1.先に室内の形を整える
最初から商品と空間を同時に作り直そうとすると、窓、天井、床、家具まで変わりやすくなります。
まずは、キッチンを配置するLDKの形状とカメラアングルを確定します。
この段階では、次の項目を固定します。
部屋の広さ
壁と天井の形
窓や建具の位置
床材
キッチンの設置位置
カメラ位置
建築条件が整った後で、キッチンの仕様を反映します。
手順2.商品を構成要素へ分解する
リシェルを一つの商品として指示するのではなく、見た目を構成する要素へ分けます。
構成要素 | AIへ伝える内容 |
|---|---|
レイアウト | アイランド、ペニンシュラ、壁付けなど |
サイズ | 間口、奥行、高さ |
ワークトップ | 素材、色柄、厚み、端部の見え方 |
扉 | 色、木目・石目・金属調などの質感 |
取手 | 形状、色、見付け |
シンク・水栓 | 位置、形状、色 |
設備機器 | IH、食洗機、レンジフードなど |
背面収納 | 幅、高さ、扉、家電の配置 |
周辺空間 | 床、壁、照明、ダイニングとの関係 |
「高級感のあるキッチン」のような感覚的な言葉だけでなく、形、色、素材、配置を具体的に伝えることが重要です。
手順3.変更禁止項目を指定する
既存の住宅パースへキッチンを反映する場合は、変更する範囲を限定します。
例えば、次のように指示します。
変更するのはキッチン本体と背面収納だけです。部屋の大きさ、床、壁、天井、窓、建具、照明、ダイニング家具、カメラ位置は変更しないでください。
変更範囲を限定しないと、AIがキッチンに合わせて部屋全体を再設計することがあります。
手順4.商品画像と仕様を一緒に入力する
商品画像だけを添付するのではなく、どの部分を参考にするのか説明します。
添付した商品画像は、ワークトップの色柄、扉の質感、取手の形状、シンクと水栓の位置を確認するための参考資料です。商品画像の背景、壁、床、照明、家具は取り入れないでください。
参考にする要素と、取り入れない要素を分けることで、商品画像の背景までコピーされる失敗を減らせます。
手順5.一度にすべてを直そうとしない
最初の生成で確認するのは、大きな形と配置です。
キッチンのレイアウトと寸法感
ワークトップと扉
取手、シンク、水栓
食洗機などの設備
背面収納
光、素材感、生活小物
この順番で調整すると、細部を整えた後にキッチン全体が変わる手戻りを減らせます。
コピペ用プロンプト
次のプロンプトは、室内パースと商品資料を一緒に入力する場合の基本形です。
添付した室内パースを基準画像として使用し、キッチン部分だけをLIXIL「リシェル」の採用予定仕様へ変更してください。
キッチンは[アイランド型/ペニンシュラ型/壁付け型]、間口[ ]mm、奥行[ ]mmです。
ワークトップは[商品名・色名]、扉は[商品名・色名]、取手は[形状・色]とします。シンク、水栓、加熱機器、食器洗い乾燥機は添付した仕様資料の位置と外観を参考にしてください。
添付した商品画像は、キッチン本体の形状、ワークトップの色柄、扉の質感、取手、設備機器を確認するための参考資料です。商品画像の背景、床、壁、照明、家具は取り入れないでください。
室内パースの部屋の広さ、天井、床、壁、窓、建具、照明、ダイニング家具、カメラ位置は変更しないでください。
キッチンの寸法感を室内空間に合わせ、床へ正しく接地させてください。垂直線と水平線を保ち、ワークトップ、扉、取手の厚みを自然に表現してください。
不明な仕様を推測して追加せず、添付資料で確認できない部分は元画像を維持してください。文字、ロゴ、架空の設備は追加しないでください。
実在する住宅を撮影したような、自然で落ち着いた建築写真として仕上げてください。
商品名や色名は、採用予定の仕様へ置き換えて使用します。
セラミックトップを自然に見せるポイント
リシェルを印象づける要素の一つが、セラミックトップです。
ただし、「セラミック」「高級」「光沢」といった言葉を強く指示すると、表面が鏡のように光ったり、不自然な大理石柄になったりすることがあります。
次のように、見え方を具体化します。
セラミックトップは、添付した商品画像の色柄と表面感を参考にしてください。柄を過度に拡大・反復せず、強い鏡面反射や人工的な光沢を避けてください。厚みと端部を自然に表現し、室内の照明に応じた控えめな反射にしてください。
なお、LIXILは、セラミックトップについて製造上、色味、光沢、柄の強弱、手触りなどに個体差が生じることを案内しています。
AIパースで表現した柄も、実際に納品される商品の柄と完全に一致するものではありません。
よくある失敗と修正方法
商品名を入れただけで別のキッチンになる
原因は、商品名からAIが一般的な高級キッチンを生成している可能性があります。
商品画像を入力し、レイアウト、ワークトップ、扉、取手、設備を分けて指示します。
キッチンの寸法が空間に合わない
AIは商品の実寸を保証しません。
平面図や寸法を併用し、「間口」「奥行」「通路幅」「ダイニングとの距離」を明記します。最終確認は図面で行います。
ワークトップの柄が強すぎる
「高級」「大理石調」「ドラマチック」といった表現を重ねると、柄が誇張されることがあります。
「添付資料の色柄を基準にする」「柄を拡大しない」「反復模様を避ける」と指示します。
商品画像の背景まで反映される
商品画像のうち、参考にする範囲を限定します。
「キッチン本体だけを参照し、背景、床、壁、家具、照明は取り入れない」と明記します。
設備の数や位置が変わる
AIは水栓、シンク、加熱機器などを追加したり、位置を変えたりすることがあります。
それぞれの数と位置を指定し、生成後に人が確認します。必要に応じて、設備ごとに範囲を限定して修正します。
AIパースで再現できること・保証できないこと
AIパースは、採用を検討しているキッチンとLDK全体の相性を早い段階で確認するために役立ちます。
AIパースで確認しやすいこと
キッチンと床・壁の色彩バランス
LDK全体の雰囲気
アイランド型などのレイアウトイメージ
ダイニングや照明との組み合わせ
ワークトップと扉の大まかな印象
商談で比較するための複数案
AIパースだけでは保証できないこと
正確な寸法
実際に選択できる部材の組み合わせ
細部の納まり
設備機器の正確な形状
素材の色柄や光沢の完全一致
施工可否
価格、納期、在庫
AIパースは、完成を保証する契約図面や商品仕様書ではありません。
お施主様へ提示するときは、「提案段階のイメージであり、実際の商品、色柄、寸法、納まりとは異なる場合がある」と説明し、正式な仕様書や見積書と区別して使用します。
実在建材をAIへ反映する共通原則
リシェルの再現方法は、キッチン以外の建材にも応用できます。
重要なのは、商品名を知っているかどうかだけではありません。
正しい資料を用意する
商品を構成要素へ分解する
形、色、素材、寸法、配置を言語化する
変更範囲を限定する
段階的に生成する
最後は図面・仕様書と人の目で確認する
外壁材の張り方向をAIへ伝える方法は、次の記事で紹介しています。
ニチハの外壁材をAIパースに正確に再現する方法|縦張り・横張りをAIに伝える指示術
大型ガレージなど、建材のスケールを崩さず配置する考え方はこちらです。
YKK APのガレージをAIパースに正確に配置する方法|スケール破綻を防ぐ指示術
AIパースを実写に近づける基本的な確認ポイントは、こちらで解説しています。
AIパースがCGっぽく見える原因|実写品質に近づけるための改善ポイント
まとめ|商品名ではなく、採用仕様をAIへ伝える
LIXIL「リシェル」をAIパースへ反映するときは、商品名だけに頼らないことが重要です。
商品画像と仕様資料を用意する
レイアウト、ワークトップ、扉、取手、設備へ分解する
参考にする部分と、取り入れない部分を指定する
室内の変更禁止項目を明確にする
大きな形から細部へ段階的に調整する
最後は最新カタログ、見積書、図面で確認する
この流れを整えることで、実在商品と空間全体の関係を、商談の早い段階で共有しやすくなります。
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