AIで住宅パースを実写化しても、なぜか「CGっぽい」「プラスチックの模型に見える」「きれいだけれど写真には見えない」と感じることがあります。
原因は、画像生成AIの性能だけではありません。
光が均一すぎる
素材ごとの反射が表現されていない
木目やタイルの大きさが合っていない
建物の垂直・水平が不自然
植栽や家具の輪郭が溶けている
部分修正の繰り返しで細部が失われている
このような小さな違和感が重なることで、画像全体がCGのように見えます。
私は建築CGに約30年間関わり、3D CAD、レンダリングソフト、画像編集、生成AIによる建築表現の変化を実務で経験してきました。その経験から見ると、実写品質を高める近道は、画像を必要以上に派手にすることではありません。
写真として不自然な部分を見つけ、原因ごとに修正することです。
この記事では、AIパースがCGっぽく見える代表的な原因と、工務店の提案画像を自然な実写品質へ近づけるための確認方法を解説します。
AIパースの「CGっぽさ」は一つの原因ではない
AIパースの品質を確認するとき、単純に「きれいか、きれいでないか」で判断すると、何を直せばよいのか分からなくなります。
まずは、どのような症状が出ているかを分けて確認します。
画像に現れる症状 | 考えられる主な原因 | 見直すポイント |
|---|---|---|
全体が白く平坦に見える | 明暗差の不足、露出過多、均一な照明 | 自然光の方向、影、室内外の明るさ |
素材がプラスチックに見える | 反射と粗さの設定が不自然 | 艶、表面の凹凸、光の反射 |
木目やタイルが偽物に見える | テクスチャの大きさや方向の不整合 | 実物寸法、目地方向、繰り返し |
建物が模型に見える | 遠近感、カメラ位置、スケール感の不整合 | アイレベル、画角、家具や植栽の大きさ |
植栽や家具が溶けて見える | 輪郭の再生成、細部の情報不足 | 葉、枝、布、家具脚などの境界 |
修正するほど画質が落ちる | 再生成や圧縮の繰り返し | 元画像からの再生成、修正回数 |
写真というより広告CGに見える | HDR、発光、彩度、シャープ処理の過剰 | 光と色の抑制、自然な陰影 |
一見きれいだが建築として不自然 | 窓、目地、納まり、寸法の誤り | 図面、仕様書、メーカー資料との照合 |
このように症状と原因を切り分けると、プロンプトをやみくもに長くせず、必要な修正だけを加えられます。
原因1|光が均一で、自然な明暗がない
写真には、光が当たる場所と届かない場所があります。
窓から自然光が入る室内であれば、窓に近い床や壁は明るくなり、室内の奥、家具の下、天井の隅には自然な影が残ります。
ところがAIパースでは、室内全体が同じ明るさになったり、天井や壁が内側から発光しているように見えたりすることがあります。
これが、CGっぽく見える代表的な原因です。
確認する場所
窓から入る光の方向が分かるか
家具の下に接地影があるか
壁と天井の境目に自然な陰影があるか
室内の奥まで同じ明るさになっていないか
照明器具の周辺だけが不自然に発光していないか
窓の外と室内の明るさが同時に均一化されていないか
改善方法
プロンプトには、単に「明るい室内」と書くのではなく、光源と光の状態を指定します。
例えば、次のように伝えます。
中庭側の開口部から柔らかな自然光を取り入れ、窓に近い部分と室内奥に自然な明暗差を残してください。壁や天井の人工的な発光、過度な露出補正、強すぎるHDRは避けてください。
実写品質を高めるためには、暗い部分をすべて消すのではなく、空間の奥行きを感じられる程度に影を残すことが重要です。
原因2|素材ごとの反射と粗さが同じ
塗り壁、木材、ガラス、金属、タイル、布には、それぞれ異なる光の反射があります。
ところがAIが素材を十分に理解できていないと、すべての表面が同じように滑らかになり、建物全体がプラスチックで作られた模型のように見えます。
素材ごとに確認するポイント
塗り壁
完全に平滑ではなく、光の角度によってごくわずかな表情が見えるかを確認します。強い光沢が出ている場合は不自然です。
木材
木目の方向、大きさ、継ぎ目が、使用する部位と合っているかを確認します。床、天井、壁で同じ木目が使われていると、CGらしさが強くなります。
ガラス
透明な板ではなく、周囲の空、植栽、室内照明などが控えめに映り込んでいるかを確認します。反射がまったくない場合も、鏡のように反射しすぎる場合も不自然です。
金属
サッシや水栓、家具脚などの金属は、色だけでなく反射の性質が重要です。輪郭全体が白く発光していないかを確認します。
布やラグ
ソファやカーテン、ラグに細かな繊維感や柔らかな陰影があるかを確認します。表面が均一だと、樹脂製の家具のように見えます。
改善方法
「高級感のある素材」といった抽象的な言葉だけではなく、素材名と表面の状態を組み合わせます。
床は艶を抑えたオーク材とし、自然な木目と板の継ぎ目を表現してください。壁は光沢のない白い塗り壁、サッシは黒いアルミ、ガラスには周辺環境の控えめで自然な反射を加えてください。
商品を正確に見せたい場合は、商品名だけでなく、メーカーの商品画像、色、施工方向、適用範囲、実物寸法の情報も与えます。
原因3|木目やタイルのスケールが合っていない
素材自体が美しく生成されていても、木目、タイル、石、外壁材の大きさが建物と合っていなければ、実物には見えません。
例えば、外壁材のテクスチャが実物より大きい、フローリングの幅が途中で変わる、タイルの目地が家具の下で曲がるといった現象です。
確認する場所
フローリングの幅が空間の大きさに対して自然か
木目の方向が途中で変わっていないか
タイルの目地が直線で続いているか
外壁材の柄が実物より大きくなっていないか
同じ模様が規則的に繰り返されすぎていないか
壁から塀、床、家具へ同じテクスチャが広がっていないか
改善方法
「木目を追加」「タイルに変更」だけでは、適用範囲や大きさをAIが推測します。
何を、どこへ、どの方向で、どの程度の大きさで使うかを指定します。
LDKの床面だけに、幅120mm程度のオーク材フローリングを長手方向へ施工してください。壁、天井、家具には適用しないでください。
建材の再現では、商品画像を見せるだけでなく、施工場所、張り方向、目地、スケールまで指定することが重要です。
原因4|カメラ位置と遠近感が不自然
建物の形が正しくても、カメラの高さや画角が不自然だと、住宅模型やCGのように見えます。
広角を強くしすぎると、手前の家具が巨大になり、奥の空間が必要以上に遠く見えます。外観では、建物の垂直線が傾き、上階ほど細くなることがあります。
確認する場所
垂直線が画面に対してまっすぐか
水平線や軒先が不自然に傾いていないか
室内の家具が手前だけ巨大になっていないか
ドア、窓、家具、人物の大きさがそろっているか
視点が低すぎたり、高すぎたりしていないか
広角レンズ特有の歪みが強く出ていないか
改善方法
自然な住宅写真に近づける場合は、視点と撮影方法を明確にします。
自然な人の目線に近いアイレベルから撮影し、建築写真用のティルトシフトレンズで垂直・水平を正確に補正してください。過度な広角表現を避け、家具と空間を現実的な大きさで表現してください。
ただし、カメラ用語を増やせば必ず正確になるわけではありません。元のCADパースやスケッチに強い歪みがある場合は、生成前に画角を整える方が効果的です。
原因5|家具・植栽・人物が空間のスケールと合っていない
建築だけでなく、周囲に配置される物も実写感を左右します。
家具、車、植栽、人物、ペットの大きさが合っていないと、建物そのものまで模型のように見えます。
よくある違和感
ダイニングチェアがテーブルに対して大きすぎる
ソファの座面が低すぎる、または厚すぎる
樹木の幹や葉が建物に対して巨大
車が駐車スペースに収まっていない
人物の足が床に接していない
犬や人物の手足が不自然
家具が通路や開口部をふさいでいる
改善方法
AIへ自由に任せすぎず、必要な物と不要な物を整理します。
元画像に仮の家具や植栽が多数入っている場合、それらがAIの判断を迷わせることがあります。変更したい物は、CAD側で非表示にするか、画像生成時に削除対象として明確に指定します。
家具や植栽を追加する場合も、「空間に合う家具」だけでなく、個数、位置、役割を伝えます。
6人掛けのダイニングテーブルをキッチンと平行に配置し、リビング側の通路を確保してください。植栽は建物を隠さない高さと密度に抑えてください。
原因6|輪郭や細部が溶けている
AIパースが一見きれいでも、拡大すると細部が曖昧になっていることがあります。
特に確認したいのは、次の部分です。
植物の葉と枝
葉が空や外壁へ溶けていないか、幹と枝が途中で消えていないかを確認します。
羽目板やリブの目地
天井や壁の目地線が途中で消えたり、間隔が変化したりしていないかを確認します。
フローリングやタイル
目地が二重になっていないか、曲がっていないか、家具の下で不自然に消えていないかを確認します。
家具の脚とファブリック
細い家具脚が床へ溶けていないか、ソファやラグがプラスチックの塊のようになっていないかを確認します。
建具と設備
窓枠、把手、水栓、照明器具の取付部など、細い部材が変形していないかを確認します。
細部の違和感は、縮小表示では見落としやすいため、完成画像を100%以上に拡大して確認します。
原因7|部分修正を繰り返している
生成した画像をダウンロードし、その画像へ別の修正を加え、さらに修正後の画像を再度読み込む。この工程を何度も繰り返すと、元画像にあった細部が徐々に変化することがあります。
すべてのAIや編集機能が同じ処理をするわけではありませんが、修正のたびに周辺部分が再生成されたり、画像が再圧縮されたりする可能性があります。
その結果、次のような変化が生じます。
エッジが柔らかくなる
木目や目地が曖昧になる
色が少しずつ変わる
光と影が浅くなる
建具や家具の形が変わる
画像全体が油絵のようになる
実例|再加工による画質劣化は細部に現れる
次の画像は、元画像と再加工後の画像を比較し、画質劣化が現れやすい部分を確認した実例です。
画像全体が少し白くなった、ぼやけたという変化だけでなく、次の4か所を拡大すると違いを判断しやすくなります。
植物・樹木の葉
天井の羽目板やリブ
家具やファブリック
床・壁・タイルなどの目地
下の画像の比較では、再加工後の左の画像で植栽の葉が塊や油絵のように見え、天井のウォールナットのリブも線がにじんでいます。(左:劣化あり/右:劣化なし)

下の画像の比較では、左の画像でラグの細かな布目が失われ、フローリングの目地や木目も曖昧になっています。(左:劣化あり/右:劣化なし)

一見すると大きな違いがない画像でも、植物、細い直線、繰り返し模様、素材表面を拡大すると、再生成による変化を発見できます。
画像を修正するたびに必ず劣化するわけではありません。しかし、複数回の再生成や再加工を行った場合は、元画像と修正版を並べ、細部まで確認することが重要です。
改善方法1|一度にまとめて指示する
変更する内容を整理し、可能な範囲で一度の生成にまとめます。
外壁
屋根
サッシ
外構
植栽
家具
時間帯
光
背景
ただし、指示を詰め込みすぎると、AIが一部を無視することもあります。重要度の高い条件と、AIへ任せる条件を分けることが必要です。
改善方法2|元画像へ戻って作り直す
数回の修正で品質が落ちた場合は、劣化した画像へさらに修正を重ねず、元のCADパースや最初の高品質画像へ戻ります。
元画像に対して修正内容をまとめ、改めて生成した方が、形状と細部を保ちやすくなります。
改善方法3|部分修正と全体再生成を使い分ける
不要物の削除や狭い範囲の修正であれば、部分編集が有効です。
一方、外壁、家具、光、植栽など複数の要素を同時に変える場合は、元画像から全体を再生成した方が自然にまとまる場合があります。
「部分修正は使わない」と決めるのではなく、変更範囲によって使い分けます。
CGっぽさを抑える基本プロンプト
使用するAIや元画像によって結果は異なりますが、実写品質を整える基本指示として、次のような内容を加えられます。
添付画像の建物形状、開口部、屋根、軒、主要な構成を基準として、自然なアイレベルの実写調建築パースへ変換してください。
プロの建築カメラマンが撮影した住宅雑誌の写真のように、垂直・水平を正確に補正し、素材ごとの質感、自然なガラスの反射、光と影を現実的に表現してください。
木材、塗り壁、金属、ガラス、布の反射と粗さを区別し、家具、植栽、人物は空間に合った現実的な大きさとしてください。
自然光の方向が分かる明暗を残し、過度な明るさ、強すぎるHDR、不自然な発光、プラスチックのような光沢、過度な彩度、過度なシャープ処理、CGレンダリングのような均一な表面は避けてください。
住宅提案の初期段階で、空間と暮らしの方向性を話し合うための検討用イメージとします。
このプロンプトだけで、すべての問題が解決するわけではありません。
元画像の情報、建築条件、変更範囲を整理したうえで、必要な指示を追加してください。
実写品質へ近づける5段階の確認手順
AIパースを工務店の提案資料へ使用する場合は、次の順番で確認すると、問題を見つけやすくなります。
ステップ1|元画像を整理する
まず、AIへ渡すCADパース、立面図、スケッチ、敷地写真を確認します。
残す条件と変更する条件を分け、不要な家具、車、植栽、背景などは、可能であれば事前に整理します。
ステップ2|建物の形状と画角を確認する
生成後は、色や雰囲気より先に、建物の外形、屋根、窓、玄関、軒、階高、画角を確認します。
ここで形状が大きく変わっている場合は、素材の調整へ進まず、元画像と指示を見直します。
ステップ3|光と素材を確認する
次に、自然光の方向、室内外の明暗差、接地影、素材の反射、木目やタイルの大きさを確認します。
画像を縮小した状態と、100%以上に拡大した状態の両方で見ます。
ステップ4|細部の生成ミスを確認する
窓、建具、目地、家具脚、水栓、照明器具、植栽、人物などを確認します。
細部だけを修正するか、元画像から再生成するかを、変更範囲から判断します。
ステップ5|図面・仕様書と照合する
最後に、AI画像を図面、仕様書、メーカー資料と比較します。
AIパースは写真のように見えても、設計図や施工図ではありません。実際に提案する仕様、寸法、納まり、法規、施工可能性は、人が確認します。
画像を比較すると修正点が見つかりやすい
画像を一枚ずつ見るより、元画像、初回生成、修正版を並べると、どこが改善し、どこが変化したかを判断しやすくなります。
比較するときは、次の項目を確認します。
建物形状が保たれているか
窓や建具が変わっていないか
木目や目地が鮮明に残っているか
光と影が浅くなっていないか
植栽や家具の輪郭が溶けていないか
色や素材が意図せず変化していないか
不要な物が追加されていないか
Windowsのフォトアプリなど、身近な画像閲覧アプリで左右に並べるだけでも確認できます。専門的な比較ソフトがなくても、同じ大きさで表示し、部分ごとに拡大すれば十分です。
実写品質と「建築の品格」は分けて考える
この記事で解説したのは、AIパースのCGっぽさを減らすための技術的な確認方法です。
しかし、実写に見える画像が、そのまま美しい建築提案になるとは限りません。
写真として自然でも、光が派手すぎる、素材が多すぎる、家具や植栽が建築を隠している、住宅の設計意図と演出が合っていないことがあります。
光、素材、構図をどのように選び、何を美しいと判断するかについては、次の記事で解説しています。
AIパースを安っぽく見せない方法|建築の品格をAIに伝えるプロの審美眼
実務で品質改善に取り組んだ具体的な経緯は、こちらの伴走記でも紹介しています。
AIパースの「安っぽいギラつき」を消す|建築の品格をAIに伝える方法
まとめ|派手さを足すより、不自然さを一つずつ減らす
AIパースがCGっぽく見える主な原因は、次の7点です。
光が均一で自然な明暗がない
素材ごとの反射と粗さが区別されていない
木目やタイルの大きさが合っていない
カメラ位置と遠近感が不自然
家具・植栽・人物のスケールが合っていない
輪郭や細部が溶けている
部分修正を繰り返している
実写品質を高めるために、必ずしも長大なプロンプトや高価な制作環境が必要なわけではありません。
元画像を整理し、建物形状、光、素材、スケール、細部の順番で確認し、不自然な部分を減らしていくことが重要です。
AIに画像を作らせることと、建築として正しく判断することは別の仕事です。
生成はAIへ任せられても、どこが不自然かを見つけ、図面や仕様と照合し、お施主様へ適切に説明する役割は人に残ります。
AIを使って画像編集やCADモデリングに頼らず、どこまで自然な建築ビジュアルを描けるか。その実例は、AIパース実例ギャラリーでご覧いただけます。
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