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お客様心理

Emotion AI™とは|工務店の住宅提案で「未来の暮らし」を描く8つの方法

更新日 2026年10月10日

住宅提案では、間取りや性能、仕様を正確に伝えることが欠かせません。同時に、お施主様が「そこで誰と、どのような時間を過ごしたいか」を話し合うことも大切です。

Emotion AI™とは、Freespace & Ideasが提唱する、生成AIを活用してお施主様の好みや価値観、暮らし方を整理し、建築ビジュアルや動画を対話の材料へ変える、建築・住宅業界向けの提案体系です。

AIにお施主様の感情を推測・判定させる技術を意味するものではありません。希望を聞き取り、設計条件と照らし合わせ、どの案を提案するかは建築実務者が判断します。

この記事では、Emotion AI™を構成する8つの方法の役割と違い、住宅提案での組み合わせ方を整理します。具体的な画像生成手順や事例は、関連記事で詳しく扱います。


建物を見せることと、暮らしが伝わることの間に

間取り図には、部屋の大きさや位置が描かれています。CADパースには、建物の形や素材が表現されています。しかし、それだけでは、お施主様が大切にしたい過ごし方まで十分に共有できないことがあります。

「広いリビングが欲しい」という希望にも、家族全員で集まりたい、友人を招きたい、庭を眺めながら静かに過ごしたいなど、さまざまな意味があります。広さだけを先に決めても、そこで何をしたかったのかが共有されていなければ、提案の方向がずれるかもしれません。

代表の山本隆義は、住宅業界での実務と建築CG制作、現在の工務店・設計事務所への伴走を通じて、設計者が思い描く空間と、お施主様が想像する暮らしをどうつなぐかに向き合ってきました。Emotion AI™は、その対話を画像や動画で支えるための考え方です。

画像を早く生成すること自体が目的ではありません。言葉だけでは捉えにくい希望を見える形で比較し、「どこが近く、何が違うか」を話せること。その答えを、次の設計検討へ返すことに価値があります。


Emotion AI™が扱うのは、建物と暮らしをつなぐ提案

たとえば「中庭が欲しい」という要望があります。中庭の大きさや位置は図面で検討します。一方、「休日の夕方、家族や愛犬と庭で食事をしたい」という希望が分かれば、光、家具、植栽、過ごし方を加えた画像を使って、空間の使い方まで一緒に検討できます。

人物やペットを描くことが適さない提案もあります。別荘や高級住宅などでは、家具、アート、光、窓の外の景色、静かな余白によって、見る人が自分の時間を重ねられる表現を選ぶ場合もあります。お施主様と住宅ブランドに合わせて、何を見せるかを決めます。

AI画像は、この対話を始めるための案です。描かれた家具、設備、建材、広さが、そのまま採用仕様や完成後の姿を保証するわけではありません。暮らしの方向性は画像で共有し、設計内容は図面・仕様書などで確認する。 この役割分担を基本にします。

Emotion AI™を構成する8つの方法

8つすべてを毎回使う必要はありません。提案の目的、物件の段階、手元にある資料に合わせて選びます。

方法

主な役割

使う場面の例

Emotion Presentation™

提案全体の伝える順番を組み立てる

図面・画像・素材サンプルを使った初回提案

Emotion Matrix™

対話から好みや暮らし方を整理する

ヒアリングと提案の方向性の確認

Emotion Staging™

パースに暮らしの情景を加える

中庭やリビングでの過ごし方の比較

Emotion Sketch™

手描き案を対話用ビジュアルへ展開する

初回面談や設計初期のアイデア検討

Emotion Prompt™

建築条件と情緒的な要素をAIへの指示にする

固定条件・変更条件・出力条件の整理

Emotion Archive™

過去の画像や検証記録を提案資産として活用する

既存CGの再活用と社内ノウハウの蓄積

Emotion Movie™

動きや時間の変化を短い動画で表す

光・植栽などを使った空間体験の共有

Virtual Staging™

実際の空間写真へ家具などを仮配置する

空室や家具のない見学会場の使い方の提案

1. Emotion Presentation™|提案全体を組み立てる

Emotion Presentation™は、図面、建築ビジュアル、暮らしの場面、素材サンプルなどを組み合わせ、住宅提案全体の伝える順番を設計する方法です。

画像を何枚も並べるだけでは、お施主様が何を判断すればよいか分からなくなることがあります。聞き取った希望を共有し、それを空間の案で確かめ、設計上の条件を説明し、実物の素材へつなげる。どの資料を、何のために見せるかを組み立てます。

他の7つの方法によって得た情報や画像を、商談の中でどう使うかを考える役割です。提案の最後には、決まった内容と次回までに検討する内容を整理します。

2. Emotion Matrix™|好みの理由を対話で整理する

Emotion Matrix™は、お施主様の好み・価値観・憧れを整理するためのヒアリング方法です。光・時間帯、植栽・自然、趣味・過ごし方、家族・ペット、写真の雰囲気という5つの軸を手がかりにします。

「明るい家」という言葉だけで進めず、朝の日差しが好きなのか、夕方の落ち着いた光に惹かれるのかを聞く。参考写真があれば、建物の形、素材、庭との関係、全体の空気感のどこが好きなのかを確かめます。

すべての項目を埋めることが目的ではありません。希望の理由と優先順位を整理し、画像で比較したいテーマを明らかにします。答えはAIに推定させず、お施主様との対話で確認します。

3. Emotion Staging™|パースに暮らしの情景を加える

Emotion Staging™は、設計条件を踏まえ、住宅パースに家具、光、素材、植栽、必要に応じて人物やペットなどを加え、完成後の暮らしを検討する方法です。

同じ中庭でも、食事の場、読書の場、子どもが遊ぶ場では、必要な配置や感じ方が変わります。情景を比較することで、「広いかどうか」だけでは捉えられない使い方を話し合えます。

演出のために建物形状や開口部を変更してよいわけではありません。元のパースや図面と比較し、AIが補った内容を確認します。詳しくはEmotion Staging™による住宅提案をご覧ください。

中庭のウッドデッキで、大人や子ども、犬がランタンの明かりとともに過ごすAI生成の住宅提案イメージ

Emotion Staging™の表現例。人物やペット、家具、光を加え、中庭でどのような時間を過ごしたいかを話し合う材料にします。AIによる提案イメージであり、完成後の姿を保証するものではありません。

4. Emotion Sketch™|手描きの発想を対話へつなぐ

Emotion Sketch™は、設計者やお施主様の手描きスケッチを、生成AIで対話用のビジュアル案へ展開する方法です。

初回面談で描いた中庭とリビングの関係や、窓辺の読書スペースなど、まだ正式な図面になっていない発想を、早い段階で共有できます。線だけでは想像しにくかった光や素材感が加わると、希望や違和感を具体的に話しやすくなります。

ラフなスケッチほど、AIが独自に補う部分も増えます。正確な完成図への変換ではなく、設計初期の検討用イメージとして使います。Emotion Sketch™の実践記事では、資料の準備や画角の扱いを紹介しています。

大きな開口部と、その先に見える植栽を簡単な線で描いた室内の手描きラフスケッチ

画像生成の出発点となる手描きスケッチ。簡単な線で表した空間の関係や着想を、対話用のビジュアルへ展開します。

手描きスケッチからAIで展開した、大きな窓越しにデッキと植栽が見えるダイニングの提案イメージ

Emotion Sketch™による展開例。ラフな着想に光や素材、家具の表現を加え、空間のイメージを共有します。AIが補った部分も含むため、希望や違和感を確認する検討用画像として使います。

5. Emotion Prompt™|希望と設計条件を生成指示へ整理する

Emotion Prompt™は、建物の形状、素材、敷地、構図などの建築条件と、お施主様が希望する雰囲気を、AIへ伝える指示に整理する方法です。

「変えない条件」「変更する条件」「加えたい情緒的な要素」を、文章、箇条書き、Matrix形式の表、参考画像などで分けます。実在する建材を参考にする場合も、商品名だけに頼らず、公式資料や参照画像で特徴を確認します。商品名の入力によって正確な形状や仕様が再現されるとは限りません。

Emotion Matrix™が「お施主様は何を望んでいるか」を整理するのに対し、Emotion Prompt™は「その希望を、どの設計条件のもとで画像にするか」を整理します。表を使うことは共通していても、目的は異なります。

6. Emotion Archive™|過去の仕事と検証を提案資産にする

Emotion Archive™は、過去のCGパースや施工写真を見直し、現在の提案や発信へ再活用するとともに、プロンプトや修正履歴、確認事項を蓄積する方法です。

以前のCGパースから建物の形を参照し、光や素材の表現を見直す。生成時の失敗と、そのとき何を変えたかを記録する。こうした蓄積は、別の担当者が次の案件で試す材料になります。

過去の施工写真を加工した場合は、元の施工事例と新しい提案イメージを区別します。再生成した画像を実際の完成写真として扱いません。元資料を保存し、権利や掲載許諾、変更した範囲も確認します。

7. Emotion Movie™|空間で流れる時間を短い動画にする

Emotion Movie™は、静止画をもとに、光、植栽、風、炎などの動きや時間の変化を短い動画で表現する方法です。

庭の葉が揺れる、夕方の光が床を照らす、照明が灯る。こうした表現によって、一枚のパースでは捉えにくい時間の過ごし方を共有できます。商談だけでなく、フォロー資料や情報発信にも使いどころがあります。

動画では、途中で窓や家具の形が変わるなどの不整合も起こり得ます。何を動かし、何を固定するかを決め、全体を再生して確認します。日照や照明性能を検証するシミュレーションとは区別します。

8. Virtual Staging™|実際の空間写真から使い方を提案する

Virtual Staging™は、空室や家具のない見学会場などの実際の写真に、家具や植栽などを仮配置して、空間の使い方を共有する方法です。

家具を置く前の部屋では、広さを実感しにくいことがあります。ダイニングやソファの配置を画像で比較すれば、暮らしのイメージを話す材料になります。ただし家具の寸法や動線は、実測や図面で確認します。

Emotion Staging™が主に設計パースを入口にするのに対し、Virtual Staging™は実際の空間写真を入口にします。掲載時には家具等を仮配置した加工画像であることを示し、元写真も残します。なお、バーチャルステージングは一般に使われる手法名でもあり、本稿ではEmotion AI™の体系に位置づけた活用方法として説明しています。

木の床と格子状の天井があり、大きな開口部から中庭のデッキにつながる家具配置前の室内

バーチャルステージング前の元画像。家具のない室内と中庭に、どのような居場所をつくれるかを検討します。

室内にソファとテーブル、中庭のデッキに屋外家具と植栽をAIで仮配置したバーチャルステージング画像

Virtual Staging™による家具配置の検討例。室内と中庭の使い方をイメージできるよう、家具や植栽をAIで加えた加工画像です。実際の設置状況や採用仕様を示すものではありません。


8つの方法は、順番ではなく役割で選ぶ

ヒアリングにはEmotion Matrix™、生成条件の整理にはEmotion Prompt™。手描き案があればEmotion Sketch™、図面やCADパースをもとに暮らしを描くならEmotion Staging™を使います。その結果をどう伝えるかはEmotion Presentation™で組み立て、必要に応じてEmotion Movie™へ展開します。

一方、過去のCG資産がある会社はEmotion Archive™から、家具のない実際の空間写真がある会社はVirtual Staging™から始められます。この2つを必ず同じ順番に入れる必要はありません。検証後の記録は、どの方法から始めてもArchiveとして残せます。

Emotion AI™は8工程を一律に実行する手順ではなく、対話、生成、提案、再活用を目的に応じて組み合わせる体系です。


中庭のある平屋では、どのように使うのか

ここからは、方法の組み合わせを理解するための例です。特定の受注事例を示すものではありません。

希望を聞き、画像で確かめるテーマを決める

お施主様の希望が「明るい中庭」なら、まず好きな時間帯や過ごし方を聞きます。夕方に家族で食事を楽しみたいという希望が分かれば、画像で確かめるテーマは「庭の明るさ」から「食事の場としての使い方」へ具体的になります。

建築条件と演出条件を分ける

設計担当者が図面やCADパースを基準資料として確認し、Emotion Prompt™で「建物外形と開口部は変えない」「中庭の食事風景と柔らかな夕方の光を検討する」「未指定の窓や設備は追加しない」といった条件を整理します。Emotion Staging™で情景を作った後も、指示した条件が守られているかを元資料と照合します。

画像への反応を、次の設計検討へ戻す

お施主様には「この過ごし方は近いですか」と尋ねます。「庭で食事をしたいけれど、キッチンから運ぶのが大変そう」という反応があれば、検討するのは画像の雰囲気だけではありません。室内から庭への動線、テーブルの位置、出入口との関係を設計側で見直します。

「夕方の落ち着きが好き」という反応も、そのまま画像の照明や窓を採用する意味ではありません。実際の方位、周囲の建物、照明計画との関係を確認します。変更が必要なら設計を検討し直し、決まった内容を正式な図面や仕様書へ反映します。

提案と記録につなげる

Emotion Presentation™で、希望、検討画像、設計上の確認、未決定事項の順にまとめます。動画が目的に合えばEmotion Movie™へ展開し、入力条件、生成結果、修正理由、確認事項をArchiveとして記録します。

良い画像を一枚選ぶことより、その画像から何が分かり、次に何を決めるかが大切です。


情緒的な表現を、実際の設計と取り違えないために

AIは魅力的な画像の中で、窓の位置や数、建材、設備、家具の大きさを変えてしまうことがあります。画像や動画を提案・公開する前に、設計担当者が元の図面、仕様書、採用予定製品の資料と照合します。

顧客情報や図面をAIへ入力する際は、サービスと契約プランのデータ取扱条件を確認し、入力に不要な個人情報は除きます。参考写真や人物写真を使う場合も、利用できる範囲と本人の同意を確認します。

お施主様へは、AI画像が暮らしや空間の方向性を検討するためのイメージであり、契約図面や完成保証ではないことを説明します。提案に用いる範囲と未確定の内容を記録し、案件に応じて確認合意書を活用します。詳しくはAIパースの確認書と合意の実務ポイントで整理しています。


まずは一つの商談から始める

Emotion AI™の目的は、8つの名称をすべて導入することではありません。対話で明らかになった希望を、設計条件を踏まえて共有し、次の検討につなげることです。

最初は、現在使っているCADパースを一つ選び、「誰が、いつ、そこで何をして過ごすか」を聞くところから始めてください。生成画像と元資料を比較し、何が伝わり、何が変わってしまったかを記録します。その小さな検証から、自社に合う方法を見つけていきます。

住宅業務での生成、提案、確認、社内運用を体系的に学びたい方は、工務店のための「建築AI実践バイブル」をご覧ください。自社の商品や業務フローに合わせた導入については、建築AI導入支援・実践プログラムで紹介しています。

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