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光と素材の調整

【建築AI・伴走記 #3】AIパースの「安っぽいギラつき」を消す|高級住宅の品格を整える実践

更新日 2026年10月18日

前回は、設計士が描いた手描きスケッチを生成AIへ読み込ませ、実写調の住宅パースとして可視化する実践を紹介しました。

スケッチの線が空間として立ち上がり、設計者の頭の中にあったイメージを、短時間で共有できる可能性が見えてきました。

しかし、生成された画像を建築の視点で確認すると、次の課題が現れます。

確かにきれいではある。

けれど、どこか安っぽい。

床や壁は不自然に光り、室内全体が明るすぎる。素材の違いが感じられず、海外のホテルや商業施設のようにも見える。

別荘や高級住宅を手がける設計事務所が大切にしている、静けさ、陰影、素材感、建築の品格とは異なる画像でした。

ここから、AIパースの「安っぽいギラつき」を抑える検証が始まりました。


AIは「高級感」を、分かりやすい豪華さで描こうとする

生成AIへ「高級住宅」「ラグジュアリーなリビング」「上質な邸宅」などと指示すると、AIは高級感を分かりやすく表現しようとします。

大理石のような光沢のある床。

ガラスや金属を多用した空間。

天井から強く降り注ぐ照明。

大型のシャンデリアや、存在感の強い家具。

ホテルのロビーのような広さと華やかさ。

一見すると豪華ですが、設計事務所が目指している建築とは異なります。

今回の実践で求めていたのは、装飾を増やした分かりやすい豪華さではありません。

自然素材の質感、抑えられた光、整った水平線、静かな余白によって感じられる品格です。

AIが考える「高級」と、設計者が考える「上質」の間には、大きな違いがありました。


ギラつきの原因を、光・素材・形に分けて確認する

「何となく安っぽい」という感覚だけでは、AIへ修正を指示できません。

そこで、生成された画像の違和感を、主に三つの要素へ分けて確認しました。

光が強すぎる

部屋全体が均一に明るく、天井、壁、床、家具のすべてが同じように照らされていました。

影が少ないため、空間の奥行きが失われ、展示場やCGのように見えます。

現実の空間には、明るい場所と暗い場所があります。

窓から離れるほど光は弱くなり、庇や壁の近くには影が生まれます。

陰影を消して明るくすることが、実写らしさにつながるわけではありません。

素材が光りすぎる

木、石、塗り壁、ファブリックなど、異なるはずの素材が同じような光沢で描かれていました。

艶を抑えた木材まで磨かれた樹脂のように光り、石材は鏡のように周囲を反射します。

素材の種類だけを指示しても、AIが適切な表面状態まで理解するとは限りません。

艶、凹凸、反射、木目、織り目など、素材が光をどのように受けるのかまで伝える必要があります。

建築のラインが乱れている

AIは、画像を華やかにするために、不要な照明、装飾、家具、柱などを加えることがあります。

その結果、本来重視していた水平線や開口部の連続性が見えにくくなります。

サッシや天井の線がわずかに傾くだけでも、建築パースとしての精度と品格は下がります。

空間を豪華に見せる要素を足すよりも、建築のラインを乱す要素を減らすことが必要でした。


最初に見直したのは、明るさではなく陰影だった

AIパースを実写に近づけようとすると、画面全体を明るくしたくなります。

しかし、今回の検証では、明るさを増やすのではなく、自然な影を残す方向へ調整しました。

窓から入る光の方向を決める。

室内の奥まで同じ明るさにしない。

天井や壁を人工的に発光させない。

家具の下や壁際に、自然な影を残す。

HDRを強くしすぎず、窓の外と室内の明暗差を完全に消さない。

こうした調整によって、画像の中に奥行きが戻り始めました。

光を加えるだけではなく、どこを暗く残すのかを考える。

別荘や高級住宅の静けさを表現するうえで、影は消すものではなく、空間を整える要素でした。


素材名ではなく、素材の「光り方」を伝える

次に見直したのが、素材の表現です。

例えば、AIへ「オーク材の床」と伝えても、仕上げ方までは決まりません。

艶の強い塗装なのか。

オイル仕上げで光沢を抑えているのか。

使い込まれた木のような落ち着きがあるのか。

同じオーク材でも、表面の状態によって空間の印象は大きく変わります。

そこで、素材名だけでなく、次のような状態まで言葉にしました。

  • 艶を抑えたオイル仕上げの木材

  • 光を柔らかく吸収する塗り壁

  • 過度に反射しない自然な石材

  • 織り目が分かる落ち着いたファブリック

  • 鏡面ではなく、控えめな反射を持つ金属

  • ガラスに映り込む自然な室内外の景色

このように素材と光の関係を伝えることで、木、石、壁、家具の違いが少しずつ見えるようになります。

ただし、AIが描いた素材は、実際に採用する製品や施工状態を保証するものではありません。

提案時には実物のサンプルや仕様資料と照合し、画像と現物を混同しないことが重要です。


足し算よりも、不要な演出を引く

今回の調整で効果が大きかったのは、何かを追加することより、不要な演出を減らすことでした。

過度なシャンデリアを置かない。

意味のない間接照明を増やさない。

金色の装飾を加えない。

床や壁を人工的に発光させない。

家具や小物で空間を埋めすぎない。

過度なHDRやシャープ処理を避ける。

AIは、指示が曖昧な部分を自動的に補います。

その補い方が、設計者の考える美しさと一致するとは限りません。

何を描いてほしいかだけでなく、何を加えてほしくないかを伝えることで、建築そのものが持つ形や余白を残しやすくなります。

高級感は、装飾の量で決まるものではありません。

光、素材、線、余白が一つの考え方で整っていることが、空間の品格につながります。


画像を一度で完成させようとしない

プロンプトを詳しく書けば、一度で理想の画像が完成するとは限りません。

光を直すと、素材が変わる。

家具を減らすと、AIが別の装飾を追加する。

床の艶を抑えると、壁や天井が明るくなりすぎる。

生成AIでは、一つの修正が別の部分へ影響することがあります。

そのため、今回の実践では、出力された画像を見ながら、違和感を一つずつ言葉にしていきました。

「安っぽい」で終わらせず、

  • 床の反射が強すぎる

  • 室内全体が同じ明るさになっている

  • 壁が白く発光して見える

  • 木材の木目が均一すぎる

  • サッシの水平線が乱れている

  • 家具の存在感が建築より強い

というように、修正箇所を具体化します。

建築の知識や審美眼は、生成後の画像を評価し、次の指示へ変換するためにも必要です。


AIが設計事務所の美意識を理解したわけではない

調整を重ねることで、当初のギラギラした画像から、落ち着いた光と素材感を持つ空間へ近づけることができました。

ただし、AIが設計事務所の美意識を学び、完全に理解したわけではありません。

人が設計思想を分解し、AIが処理できる具体的な言葉へ置き換えた結果です。

設計者が「静かで上質」と感じている空間には、複数の要素が含まれています。

光の方向。

影の深さ。

素材の艶。

家具の高さ。

開口部の見え方。

余白の量。

これらを言語化しなければ、AIはインターネット上に多い、分かりやすく華やかな表現へ戻ろうとします。

AIパースの品質を決めるのは、AIの性能だけではありません。

設計者が何を美しいと考え、その違いをどこまで言葉にできるかが重要です。


今回の実践で分かったこと

今回の設計事務所との実践では、次のことが分かりました。

  • AIが描く高級感と、設計者が考える上質さは一致しないことがある

  • 明るく光沢の強い画像が、実写らしいとは限らない

  • 光だけでなく、自然な影を残すことが重要である

  • 素材名に加えて、艶、反射、凹凸などの表面状態を伝える必要がある

  • 装飾を足すより、不要な要素を引く方が品格を整えやすい

  • 「安っぽい」という感覚を、具体的な修正項目へ分解する必要がある

  • 一度の生成で完成させず、画像を確認しながら調整を重ねる

  • 最終的な品質を判断するには、建築の知識と審美眼が欠かせない

手描きスケッチから空間を可視化できても、それだけで提案に使える画像になるわけではありません。

建築の形を確認し、光と影を整え、素材の質感を調整し、不要な演出を引く。

この工程を経て、AIパースは設計事務所が提案したい空間へ近づいていきます。


次は、建物から別荘の世界観へ

光、素材、ラインを整えることで、AIパースの安っぽいギラつきは抑えられました。

しかし、別荘や高級住宅の提案として考えると、建築の品格を整えるだけではまだ十分ではありません。

どのような家具を置くのか。

インテリアやアートをどう選ぶのか。

窓の外の景色と室内をどうつなぐのか。

朝、夕暮れ、夜で空間の表情をどう変えるのか。

次回は、建物だけでは伝わらない別荘・高級住宅の世界観を、家具、インテリア、光、景色まで含めてAIパースで描く実践を紹介します。

【建築AI・伴走記 #4】別荘・高級住宅の世界観をAIパースで描く|設計事務所との実践


AIパースを安っぽく見せないための考え方

この記事では、設計事務所との実践で起きた問題と調整の過程を中心に紹介しました。

AIパースが安っぽく見える原因や、建築の品格を整えるための基本的な考え方は、次の記事で詳しく解説しています。

AIパースを安っぽく見せない方法|建築の品格をAIに伝えるプロの審美眼

前回の伴走記では、手描きスケッチから住宅パースを作成し、設計イメージを可視化した実践を紹介しています。

【建築AI・伴走記 #2】手書きスケッチが数秒で住宅パースに変わる|設計事務所とのAI実践


自社の美意識をAIパースへ反映したい方へ

工務店や設計事務所がAIパースを実務で活用するには、一般的なプロンプトをそのまま使うだけでは十分ではありません。

自社の設計思想、素材、光、家具、顧客層に合わせて、画像の基準と確認方法を整える必要があります。

Freespace & Ideasでは、工務店や設計事務所の実務に合わせた生成AI研修と導入伴走を行っています。

工務店・設計事務所向け生成AI研修|建築実務で使えるAI活用講座

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